2021年10月28日
水産庁長官 神谷 崇 殿
JCFU全国沿岸漁民連絡協議会
北海道・留萌管内マグロ協議会
会長 三浦順一
北海道・北後志地区マグロ釣り漁業船団
船団長 柴田幸信
北海道・津軽海峡まぐろはえなわ漁業船団
船団長 下山浩助
北海道・西太まぐろはえなわ船団
船団長 加我 忍
北海道・福島吉岡マグロ延縄船団
船団長 住吉富士樹
北海道・松前さくら漁協マグロ延縄部会
部会長 松谷 聡
青森県・下北北通まぐろ連絡協議会
会長 泉 徳隆
青森県・大間マグロ延縄部会
部会長 渡辺良彦
青森県・大間マグロ一本釣り部会
部会長 菊池正義
青森県・大畑まぐろ部会
部会長 佐々木佑弥
青森県・三厩マグロ一本釣り部会
部会長 牧野勇次
青森県・東部連合いかつり協議会
会長 吉井隆光
青森県・西部連合いかつり協議会
会長 敦賀勝正
千葉県沿岸小型漁協カジキ縄部会
部会長 嶋津圭一
長崎県・対馬市曳縄漁業連絡協議会
会長 宮崎義則
沖縄県・八重山漁協マグロ漁業船主会
会長 座波幸治
沿岸漁民の経営維持を重視した
クロマグロ漁業管理政策を求める
要望書
国連やFAOなどでは家族農業や小規模漁業を大切にし、農漁業政策実施にあたっては小規模農民・漁民の生活権や生存権に配慮した政策を実施するよう各国に提言している。また、来年2022年を小規模漁業重視の政策を各国に求める「国連小規模伝統漁業・養殖年」としている。
しかし、日本の漁業政策は、国際的な動向とは真逆に「改正漁業法」にみられるように、企業資本漁業を優先し地域沿岸漁民の自治権をはく奪し、沿岸漁民・漁協の経営を衰退へ導く方向に向いているといわざるを得ません。
2015年から実施されているクロマグロの漁業管理政策・小規模沿岸漁業への漁獲割当制度はまさにその先例と言って過言ではありません。現状の管理政策下では沿岸クロマグロ漁民の生活は成り立たず、地域漁協の経営も困難な状況に追いやられています。
国は、国連の諸決議・報告にのっとり、小規模・沿岸・家族漁業の振興を重視した水産政策に転換することを強く求め要望します。
要望事項
クロマグロについてはTAC管理のもとで、つりやはえなわ漁業など小規模沿岸漁業に強い漁獲規制がかけられたままとなっている。
そのため、クロマグロが増えても各地の沿岸クロマグロ漁家は漁獲することができず経営は困難に直面する状況となっている。クロマグロの漁業管理については沿岸小規模漁業および地域漁協の経営を重視した管理内容とするよう、以下の点を強く要望する。
(1)沿岸つり・はえなわの小規模漁業は、本来資源に悪影響をおよぼす漁法ではないこと、全国各地の漁協や漁村の経済をささえる漁業であることなどを考慮し、国連決議や国際漁業条約にある「小規模漁業配慮条項」にのっとり基本的にはTAC対象からはずすこと。
(2)TAC管理対象とする場合は、沿岸クロマグロ漁民の生活、地域漁協の経営維持の観点から、大型魚・小型魚とも沿岸つり・はえなわ漁獲枠を大幅に増やすこと。とくにWCPFCでの増枠が決定した際は、TAC規制で苦しむ沿岸つり・はえなわ漁業を救済するため、優先して漁獲枠を大幅に増やすこと。
(3)第6管理期間の配分枠に対する漁獲実績はつり・はえ縄を含む知事管理漁業は小型魚で80%、大型魚で77%である。第5管理期間も知事管理漁業は小型魚で76%、大型魚で72%であった。このように漁獲実績が毎年配分枠の7割台となるのは、つり・はえ縄漁業の特性を考慮せず小規模漁業者に小さな漁獲枠しか与えないために起こる国のTAC制度の欠陥である。少なくとも取り残し枠は資源を温存したことになるのであるからWCPFCにも納得させて翌年に100%上乗せをするよう強く要求する。
(4)20数経営体の大中まき網漁業に対して、沿岸つり・はえなわ経営体は2万を超える。当初からの沿岸漁民の反対にもかかわらずクロマグロのTAC制度では大臣許可を優遇した漁獲配分からスタートした。現在もその基本ベースで配分が決められている。その結果、第6管理期間の大型魚の配分枠は大中まき網が3252トン、知事管理漁業が2253トンとなり、大中まき網漁業優遇のTAC規制となっている。基本的な漁獲枠配分を小規模漁業経営維持に配慮した配分に見直すよう強く要求する。
(5)現在の実績主義のTAC管理方式では、将来を担う若手漁業者を新規参入できない状況に追いやっている。TAC配分は単純な実績主義で行うこと無く、圧倒的多数の沿岸漁業の発展を指向する未来志向・後継者育成の観点を考慮したものとするべきである。また、TAC制度への移行によりつり・はえなわ漁業では近年の漁獲実績が著しく低下している地域もあり、今後、さらに実績主義で配分枠が決められたら配分枠が縮小の一途をたどると心配する地域もある。機械的な実績主義による配分枠決定にならないよう強く要望する。
(5)TAC管理にあたっては、沿岸つり・はえなわ漁業と定置漁業・県まき網などの沿岸漁獲枠を一体管理枠とするべきではない。北海道クロマグロ訴訟で問題となった事例のように、定置網での漁獲増影響が小規模な沿岸つり・はえなわ漁業を圧迫している。このようなことが起こらない制度とするよう強く要望する。
(6)北海道では、定置網の過大漁獲により、枠を遵守していた沿岸つり・はえなわ漁民にまで6年間小型マグロ漁獲量の基本配分量をゼロにした状況が今も続いている。北海道のつり・はえ縄漁民を苦しめるこの措置を早く解消し、沿岸漁民が安心してマグロ漁業を営めるようにすること。
(7)未加入者もいる保険制度である漁業共済制度だけでは生活はなりたたないことから、一層のクロマグロ所得補償対策を実施すること。
(8)北海道や青森、対馬など全国各地で、増加したクロマグロによるイカ釣りやブリはえ縄漁などの漁具被害が頻発し、漁業操業を困難にしている。クロマグロの漁獲規制によっておきているこれらの漁業被害に対する救済対策を十分に行うこと。
(9)大中まき網による漁獲圧力は、その探索能力、漁獲能力から強大である。西欧でもTAC管理の弱点として「低価格魚」「小型魚」の海上投棄が問題とされており、日本でも大中まき網漁業による海上投棄が疑われている。ICCATのようにオブザーバーの乗船や、監視カメラの使用で、不法投棄や過剰な養殖用種苗の池入れなどの操業不正がないか監視を行うこと。
(10)沿岸漁民が厳しい漁獲規制をうけているにもかかわらず遊漁船やプレジャーボートによるクロマグロ操業が活発に行われ、漁獲されたクロマグロが販売されている実態もある。このような現状に対して厳しい規制を強いられている沿岸漁民も我慢の限界である。水産庁としてレジャー船規制について沿岸
漁民が納得できる制度を作るよう要望する。
以上